マイケル・ムーア 『華氏9・11』 を見る

bbb_tomo2004-07-12

率直によくできた映画だった。ブッシュ政権の陰謀説っぽい側面がやや強調されすぎてるんじゃないかという感もあったが、字幕なしでも十分に理解しやすい内容で、小学生や中学生でも理解できる。映像と音声のミックスの仕方は独特のマイケル節で、この人の映像レトリックはさすがだなあと感心した。シンプル、かつわかりやすい。政治の名を語る娯楽エンターテイメントだという人がいるかもしれないけど、下手なカルスタの論文や政治演説よりずっと動員力のある媒体ではなかろうかと思う。ブッシュ政権のポリシーの一貫性のなさは、元は愛国保守系だった母が、イラク戦争で子を失い、「アルカイダの攻撃が息子が死んだ理由であるべきなのに、実際にはアルカイダが戦争を始めたんじゃない。政府が戦争を始めなければ息子は…」という発言に濃縮されている。

そんな支離滅裂なブッシュ政権の片棒を担いできた小泉政権に対して以前よりは若干ましな反応が選挙で出て、不在者投票したかいが少しはあったのかと思う今日この頃。

[追記] 07/15/04
 ラジオでこの映画の問題について議論がされてて、大まかに1)中東の人々の表象のされ方、2)イスラエルについてほとんど触れてないこと、等が問題になっていた。確かに、説明不足な部分が多いけど、ムーアはわかっててやってるのかなあと思う。多分イスラエルのことが絡んでくると、現在のような公開状況では公開できなかったような気がするし、そもそも、この映画の目的が、ある程度政治に関心がある人よりも、普段、政治的問題に無知になりがちで、この映画の中で一番貧乏くじを引いていたような「無知な庶民(ムーアが考える)」を動員してアンチ・ブッシュ・キャンペーンを張ろうとしていると思うので。限られた時間の中で、娯楽映画としてそのような層の人にもっともインパクトのあるレトリックとして理解されるために、苦肉の策だったのではと思う。
 日本の選挙の結果について「若干ましな反応」とか書いちゃったど、結局、現政権が交代したわけじゃないし、二大政党とか言っても差異が見出せないくらい似通ってるし。なんか日本帰った時にスタジオのおばちゃんが「小泉政権がダメなのはわかるんだけど、どこに入れたらええかわからんがんね〜。」といってたのがすごく印象に残ってる。UFJ潰しがアメリカの陰謀だという記事を読んで何気に思う。