「直感的」に使えるネットの仕組み

「直感的に使えるネットの仕組みづくりを」――米MSNのブレイク・アービング氏

 ちょっと勘所を得ない記事だ。いったい「直感的に使えるネットの仕組み」ってなんなんだろう。手の内を明かさないためにあえて煙に巻くようなことをいっているのか・・・。
 

アービング氏は「奥ゆかしい」日本の文化がメッセンジャーの普及を阻んでいるという。

 「6、7ヶ月ほど前、我々は文化人類学者を使って、インスタントメッセンジャーを使う日本人のコミュニケーション活動の分析を行った。それによると、(同じアジアの国の中でも)中国人や韓国人と比べて日本人は礼儀正しい。そして礼儀正しいがゆえに、パソコンの画面に突如メッセージが出てくる今のインスタントメッセンジャーは失礼だと考えている人が多いことが分かった。日本市場向けには、相手のメッセージがいきなり出てくるのではなく、メッセージを受け付ける状態になったと全ての知り合いに告知するなど、違う仕組みを導入しなければいけないと考えている」

アメリカでは道で一対一ですれ違うような時に知らない人でも挨拶する。日本でそれすると「何!?」という感じだけど、そういう習慣の違いがメッセにも反映されてると。そりゃ別に普通のことだわな。

ソーシャルネットワークサイトは、リアルの世界の友人たちとネット上でつながること、そしてその友達が誰とつながっているか分かるのが面白いわけだが、現状ではリアルの世界で役立つものにはなっていない」「これらのサイトの多くは『誰が一番多く友達を作れるか』という、一種のゲームになっている。『あいつは461人も友達がいるのに自分は28人しかいない、もっと友達を作らなきゃ』という感じで。本来の目的であるコミュニケーションには使われていない。顔を知っているだけの人たちと、親しい友人とでは交わすコミュニケーションや共有する情報も違う。MSNではそうした親しさの度合いを個人が規定して情報のやり取りができる環境を作っていきたい」

 要約すると、MSNの戦略は、「ネット・コミュニケーションには文化差がある。PCと携帯は融合する傾向にある。ブログでは遅れをとったが、統合的ネット・コミュニケーションサービスの提供で、コミュニケーションの「質」を上げ、リアル世界でのネットワークにおける利用価値を高める。実世界において、「直感的」で「何気なく」行っているコミュニケーションの仕組みをネットへ組み込んでいく」ってことかな。

 いまいち具体性が見えてこないけど、落としどころは文化差、個人の社会的特性に適応するようなシステム(上記のように日本的文化環境に適応させるには「メッセージを受け付ける状態になったと全ての知り合いに告知する」とか)ってところか。

 けど、あんましネットをリアルに近づけても、ネットだからこそ、という利用価値がなくなる気もするんだが。質が高く、密度の濃い「本来のコミュニケーション」てのは少し引っかかる。西洋的価値観かな。コミュニケーションを目的合理的にとらえ、道具的コミュニケーションに重点をおく。匿名ネットでのコミュニケーションに深みがないのは確かなことだろう。でも「つながる」こと自体が目的であるコミュニケーションだからこそ、ネットの利用価値の一つのがあり、これがネット利用者の裾野を広げてきたはずだ。

 アービング氏は、「リアルの世界で役立っていない」ということを強調しているが、「ネット」を「リアル」の枠組みにはめ込むことに有用性がある、というだけでは早急すぎる気がする。むしろ、すでに「ネット」は「リアル」でのコミュニケーションのとり方を大きく変容させているし、それこそ「直感的な」次元でリアルのコミュニケーションのとり方を変えているし。でも、ネット・インフラの掌握を目指すMSNとしては、日常+αだったものを、完全に日常に組み込むって戦略は当たり前なのかな。ちと面白みがないが。