05-14-2004

たまたまメーリング・リストを読んでいたら、イアン・マッケイが今やってるユニットThe Evensのライブを発見。しかも、今日だよ!ってなわけでいってきたわけであります。チケットはたったの$5。多分お客さんの入りからして、わざと事前に告知してなかったぽい。メーリングリストで情報が流れた当日にライブってことも考えて、多分こじんまりとやりたいというマッケイ側の意向なのかな?イアン・マッケイって小規模のライブでしかやらないっていうので有名だし。事実、ライブがあったグラス・ハウスというライブハウスはメインのホールだとキャパ1000人以上入るところなんだけど、この日はたまにアート・ショウ兼ライブ・イベントでアート展示に使うサブ・スペースを利用してのライブだった(キャパ100人くらい?)。多分お客さんは100人もいなかったかな。

さて、1バンド目は地元ClaremontのAmp For Cristというバンド。編成は3人で、ジャンベ、中国の木琴(揚琴)、弦楽器(ギター、琵琶?、バイオリン)という民族音楽っぽい編成で、フロントの揚琴担当の女性と弦楽器担当の男性(推定40歳位で超ひげもじゃ)が歌を担当してました。個人的にかなりヒット。ウーロン茶の宣伝で流れてそうな感じなんだけど、そこまで本格的に中国の音楽というのじゃなくて、マッタリ感がただよいつつ、ケイジャンぽい結構切なく、根無し草的な感じも含んでいろんな音楽の影響が自然な感じでブレンドされてました。

そしてEVENSの登場。普通にイアンがステージ(まだセッティングもされてない)に上がると、一瞬フロアが静まってイアンに注目が注がれる。イアンもちょっと困惑げに客席に向かって「会話を楽しんでよ」って。やっぱりみんな期待してるんだね…とか思いつつ、セッティングを自分でシコシコやってるイアンをボーっと眺める。照明装置もない場所なので、イアンが部屋の明るさを適当に指示していよいよライブの開始。前のバンドに引き続き、結構座っている人もいっぱいいてマッタリした空気で演奏が始まるのでした。

イアンはギターと歌を担当で、元Warmersのエイミー・ファリーナがドラムを担当。個人的には微妙にMates of Stateを思い出したりして。最近二人編成って微妙に流行ってるみたいだし…。まあ流行りはともかく、とりあえず、もうはじめの一音でイアン節全開。なんだろね。ギターって持つ人変わるとこんな音が出るんだねぇ。ギターはアンプ通してるんだけど、歪はほとんどなしの生音に近い感じで、あくまでシンプルに、だけど、ひねくれて音と音の間合いをうまく利用したサウンド。何だろう。テクじゃないんだな。コードとかから外れても、その差異に活路を見出して、それを着実に積み重ねていった、その集積というか。なんか、まさにイアンが20年近くかけてやってきたことを音も体現しているんだなあと。

マジョリティの協和音からこぼれだし、Minor Threat(少数者の恐怖)、そしてDischord(不協和音)の創設。常に、マジョリティの中にある違和感を感じ、それを持ち続けてきたイアンにしか出せないんだろうなあ。でも、この「イアンにしか出せない」っていうのはあくまでもロック・スターのそれとは違って(いわゆるオーセンティック、正統的というのではない)、地道に積み重ねることの重みというのだろうか。自分はまだ高校生のころ「パンクってシンプルなだけにセンスがすべてっしょ」みたいなことを言ってた気がするんだけど、さすがにあのころから10年たち、EVENSのようなバンドを見ると、センスだけじゃなく、地味な積み重ねがいかに大切かを最近ひしひしと感じます。センスあっても意志が続かずつぶれてくバンドもいっぱいいるし、最初はぱっとしなかったけど、地味なツアーを繰り返し繰り返し、すごくよくなるバンドもいるので、行為の繰り返しは軽視されるべきじゃないなぁと。

ライブのほうは、ドラムとの掛け合いボーカルもばっちりでたまにハモったりして、でもメロメロしてない、あくまでイアンのストレートで不器用なあの声なんですわ。まだはじめたばっかりで慣れてないのか、曲の終わりにハモリがずれてテレ笑いしちゃったりして。一曲目は曲の途中で急にフロアの後方からホーンの音がして、前にいる人みんないっせいに振り向いてみたら、実際にホーンを吹いてて、こういうフロアを使った意外性のある演出ってやっぱり大きなクラブではできないな。

曲名は忘れたんだけど、10年くらい前にDCであった警官による暴行を歌った歌で、サビの部分をオーディエンスを歌ってほしい、ってイアンがオーディエンスに語りかけた(EVENSはコーチェラでもライブ出たみたいで、その時はオーディエンスにシング・アロングをしてもらいたかったんだけど、ちょいうまくいかなかったらしい)。「オーディエンスがなくちゃ、やっぱりライブは始まらない、オーディエンスも一緒にライブを創りあげてるんだ」ってことを言ってじゃあ、こう歌ってね、ってちょっと歌ったらみんな即効で歌って、イアンかなりご満悦。実際の曲の中でもみんな大合唱で、すごい連帯感。「オーディエンスの参加」ってなんか、今やインディ〜D.I.Y神話みたいになってるけど、実際オーディエンスのやれることって、ライブに参加するだけじゃなく、ライブの中でも外でもいっぱいあるのに、いつの間にか神話が一人歩きして、だんだんオーディエンス(自分も含め)やパフォーマーがライブに行く以外何もしなくなっていってる気がしてたので、ちっちゃなことなんだけど、すごい印象深かったな。

イアンはいすに腰掛け、アコースティック・ライブな感じだったんだけど、座りながらがんがん動いてそのバイブレーションがフロアにも伝わりまくり。すっごいライブが短く感じて、まだまだ演奏を続けてほしかったス。

ライブ後話しかけたら、「音源が出てないからまだまだだけど、日本でもライブができるといいなあ、何かいいプランがあったらディスコードにメールしてよ」って言ってたので、日本で見れる日も近いかも。